極限環境生物学会について
生命が地球上に誕生して約40億年、この間生物は様々な環境にさらされ、それに適応するように進化して現代にいたっている。現在でも地球上には生命にとって苛酷な極限環境-たとえば、砂漠、火山、温泉源、高濃度の塩湖、深海など-が存在し、こうした環境は生物にとって非常に苛酷な環境と思われる。しかし、このような極限環境にも多様な微生物{好熱菌、低温菌、好塩菌、好酸性菌、好アルカリ性菌、嫌気性菌、好圧菌、好乾燥性菌、放射能耐性菌、溶媒耐性菌、重金属耐性菌、人工化学物質(ダイオキシン、PCB等)分解菌など}が存在することが明らかになってきた。なかでも、極限環境微生物として発見された古細菌(ア-キア)が生命の起源に密接にかかわっている可能性が指摘され、こうした研究が直接的に、生命の誕生と進化の謎に迫るものであると考えられている。そして今日では、極限生命の探索は地殻内生命体に向かい、さらに地球外生命体の存在可能性についての研究につながっている。
極限環境微生物の研究は、世界に先駆け日本で学問的に体系化されてきた。その結果、基礎的な科学研究から産業的な応用まで多大な貢献をなしてきている。今日の地球環境問題、生命の起源研究、医薬品や有用物質の生産、およびバイオテクノロジーの発展にとって極限環境微生物学はなくてはならない存在であり、21世紀の新たな研究の展開において重要な役割を果たすことが期待される。
世界を見渡すと、EUでは既に極限微生物プログラムが走っており、アメリカでもNSFが極限環境微生物研究の支援を開始した。また、極限環境微生物に関する国際会議が1998年1月横浜で、また2000年9月にはドイツ、ハンブルグ市、2002年にイタリア、ナポリ市、2004年に米国、ボルチモアにて開催され、そして2006年にフランスで開催と回を重ねている。こうした流れの中、極限環境微生物に関する国際的な学術誌としてSpringer-Verlag Tokyo から"Extremophiles"が出版されている。Extremophiles誌は、発刊初期にimpact factorが3.1を超え、国際一流ジャ-ナルの仲間入りをはたした。そして、ゲノム情報科学、地殻内生命体、地球外生命探査といった、新たな科学技術の進展により極限環境生物学も新たな段階にはいりつつある。
この様な状況のもと、1999年10月に「極限環境微生物学会」(2010年に「極限環境生物学会」と改名)を設立したことは重要な意味がある。わが国の広い分野の多くの研究者達の参加を得て、多面的な研究対象と多様なアプローチを総合的に議論し、各極限環境生物研究の推進を図っていくのがこの学会の狙いである。
最新のお知らせ
- 2025/04/01 Engeering Micrbiology誌からのお知らせ
- 2025/03/15 「東アジア極限環境微生物会議」(1st East Asia Conference on Extremophiles)および年会の開催
- 2025/03/15 「極限環境生物学会・研究奨励賞」の応募